ソフト闇金ってなに?③~ソフト闇金店長の物語

ちょっと視点を変えて、ソフト闇金の経営者の気持ちになってみましょう。

皆さんもヤクザの気持ちになって下さい。

極悪非道の銭の亡者になりましょう。

楽しそうですね。

ここからはフィクションです。

ただし現職のソフト闇金の話を参考にリアルに作っています。


今朝も遅めに秋葉原の事務所に出勤すると、求人サイトのド〇ントで募集した大学生やバイトのガキどもがダラダラ前日確認の電話をしている。


明日返済予定の客に前日電話を入れるのはこの仕事の鉄則だ。


「明日2時半までにはATM行けるように準備しといてね。うんうん。しっかりね。うん。」

最近の若いのは声に張りがない。


草食系だかなんだか知らないが、あんまり怒るとすぐやめちまうから優しくクンロクいれてやる。

お前の担当客今日何人電話出た?

2人だけか?

明日返済日の客6人いるはずじゃねえのか?

「はいすいませんバンバンかけます。」

バイト感覚だから店長の言葉なんて右から左だ。

俺の若い頃は兄貴の金を回収できなかったら灰皿で引っぱたかれたもんだ。

だめだだめだ。

若い頃はとかおっさん臭いこと言うとバイトがやめちゃって仕事が増える。がまんがまん。


ソフト闇金の経営は少額資金でできる。

まずホームページを作って客からのフォームを待ち、

パソコンとにらめっこする事五分、全国47都道府県から3桁の数のメールが届く。

パチンコはいいけどお前らせめて家賃くらい残せよとあきれるが、それよりこいつらを金にしないといけない。


「フォームを拝見したところ、問題なく審査を進められますので、今からお電話掛けてもよろしいですか?」

一斉送信

返ってきたヤツにすぐ電話する。

こいつは貸せそうだ。


「何とか一万円の枠は取れたから、一万円までなら融資できるからね」

枠って何だよ!毎回自分で言って自分でツッコミ入れたくなる。

駆け出しの新店舗だから審査は若いのには任せておけない。

俺の長年のカンでやるしかない。


昼飯を食っていると、トバシがけたたましく鳴った。

トバシとは他人名義の携帯の事だ。

会社の昼休みにATMに行って利息を振り込む約束の客からだ。

「コンビニ着きました」

暑いせいかハアハア言ってやがる。

顔は知らないが絶対脂ぎったおっさんだ。あだ名はアブラカタブラにしておこう。

口座番号を伝える。

実は客に振り込ませるのは俺たちが用意した口座じゃない。

新規借り入れ希望の客の口座だ。

利息の振込みを新規の客に回せば、うちの会社の資金を使わずに顧客が増やせる。

これで金は倍々で増えていく。


またトバシが鳴った。

もう振込終わったのか。

昼休みのATMにしちゃやけに早い。

「すいません、口座に振り込もうとしたらエラーになったんですが

なに?どういう事だ?

はっとした。俺とした事が。

こいつは嘘を言っているのは間違いない。

アブラカタブラは口座番号を聞いた途端、サツにチンコロしやがったんだ。

サツは闇金口座を簡単に凍結できる。

アブラの逃げ道は、おのれがチンコロしたって言う証拠がない事だ。


「あの、昼休み終わっちゃうんですけどどうしたらいいですか?」

アブラは馬鹿じゃない。

口座が止まったのは大打撃だ。

腹の中ではわざとやったってわかってるからぶっ殺したくなるが、

「てめえ口座止めただろ」なんて言ったらビビって電話出なくなって明日取り立てできなくなる。

ここは引くしかない。


わかりました。こちらのトラブルですので延滞金はいりませんよ。

畜生、さっきの新規の客は口座ブラックになってもう2度と銀行口座を持てないから金にできねえじゃねえか。

ファックだ。


事務所のクーラーがイカれたせいで汗だくだ。

今日は新規融資が41件。

返済は予定32人のうち7人。

返済しなかった客のうち3人は電話に出なくなって3週間目だからシュレッダー送りだ。

バイトの歩合給からがっつり引いてやる。

あと10分で夜の7時だ。

営業成績ボードに「飛ばれた金額」の赤を貼る時のイヤミは事務所での唯一のストレス発散だ。

本当はしっかりした若い衆がほしい。

暴走族の後輩はみんなオレオレ詐欺やってるし、金融みたいに地道な商売をやる根性のある若い奴は今どきいない。


それにしてもド〇ントで集めた大学生どもはやる気がない。

明日は土曜だ。

今週の締めがあるからバイトを帰らせたら残業だ。

帰ったら舎弟とクラブのVIPに座って面倒見てるキャッチどもにナンパでもさせるか。

朝まで飲めるのは金曜だけだしな。

連休だと思うとペンを走らせる手に力がこもった。


この短編は友人や知人の話を元にしたフィクションです。

筆者はヤクザでもソフト闇金の店長でもありません。